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コラムテーマ:Concept Model information-その1
ミラノでの鮮烈デビュー!
近未来型スクーター、
BMW CONCEPT C
「見ただけで感動を与える」という開発目標を掲げ、技術的な機能性と品質、感情に訴えるコンポーネントについても意識しているというコンセプトC。
モデル名の"C"は「コミューター(通勤・通学者)」を表し、プレミアム・セグメント用スポーツ・スクーターに新たなる旋風を巻き起こさんとするBMWモトラッド。
これは単に最高レベルの大型スクーターというわけではなさそうだ。
◎運動性&機能性を秘めた洗練デザイン
主にリッタークラスのツアラー・ラインナップを核とするBMWから、ミラノショー(EICMA2010/11月2日〜7日)において衝撃の発表があった。
同社としては初の大型プレミアム・スクーターの投入と同時に、幅広いユーザー層へのアピールをしていくというもので、このために用意されたCONCEPT Cの圧倒的な存在感が説得力を増していた。
そのCONCEPT Cだが、モーターサイクルの傑出した走行特性+スクーターならではの俊敏性や快適性といったコンセプトを融合させると同時に、最高レベルのダイナミックな走りも実現しているというから期待度も高まる。
また同社としても「長い間自動二輪車に乗ることを我慢し、これまでモーターサイクルを購入することに決心がつかないままであった人々にとっても興味深い選択肢となる」としており、新たなユーザー獲得への意欲を感じさせる内容だ。
なにより将来の電気モーター駆動も視野に入れているという点が、じつに興味深いものであった。
◎革新的で未来志向のコンセプトC
ひとめでBMWであるとイメージしやすいルックスをもつCONCEPT Cは、大人なユーザーのマインドを刺激しそうなステータス性の高さが感じられる。
車両後部に向かって上昇するボディ・ラインもスポーツ性をイメージさせるには効果的な演出だ。
そしてスプリット・フェイスと呼ばれるフェイス部からフロント・フェンダー上まで伸
びる3分割セクションは、視覚的な躍動感に満ちたもの。
また先端が2つに分かれたバグ・スポイラーも、同社スポーティモデルのS1000RR的でアイコンとして効いている。
排気量およびスペックは未発表だが、新型直列2気筒エンジンとCVT(無段変速機)トランスミッションを搭載するとあり、強烈なウェッジラインがもたらすスポーティでダイナミックな印象とともに重量級ボディの俊敏性を十二分にアピールしている。
さらに同社GSモデルに採用されるようなアルミ・ルックのバッシュ・プレート(エア・インテーク付き側面衝突保護パーツ)が機能面を高くアピール。
ブラック・クローム仕上げのランニング・ギアやフレーム部が、アルミ・クローム、シルバーおよびブルー塗装のボディに対してエキサイティングな躍動感を生み出すことにも成功。
同様にブラック・サテンで塗装された部分は、車両中心部にはっきりしたコントラストをもたらしており、こうした
効果が生み出す高級な印象と走りへの期待感とがBMWファンを間違いなく刺激するに違いない。
◎先進技術と走り、
利便性までも標準装備
注目すべき点はこれだけではない。
高度な技術により実現された中空シャフト式シングル・スイングアームを装備し、外側から見えるスプリング・ストラットへと接続。
フロントには倒立フォークと
ラジアル・マウントされたダブルディスクを採用し、信頼性の高いBMWモーターサイクル用ABSとともに安全性への配慮も抜かりなしだ。
加えて2機のビデオ・カメラを後部に搭載し、後方の状況をコクピットの2つの液晶モニターに表示。
バック・ミラーレスというレーサー的なルックスも、斬新で話題となりそうだ。
これだけ先進的な未来型コミューターというイメージを作り上げているが、収納力も十分確保するなどスクーター本来の用途にも十分配慮され
るというから今後の展開を待ち望むこととしたい。
さて、これほどの内容を秘めるコンセプトCだけに、市販されれば昨今の2輪車販売低迷へのカンフル剤としても大いに期待したいところ。
プレミアムセグメントへの位置づけではあるが、所有欲をかき立てられた大人なライダーに対する訴求力は相当あるはずだ。
コラムテーマ:EV-その2
軽二輪登録モデルの登場で、
EVシーンはどう変化するのか。
2010年春の東京モーターサイクルショーでお披露目され、俄然注目を浴びていた軽二輪登録のEVスクーター……それがVECTRIX・VX-1だ。
◎VECTRIX/ベクトリックス
昨今のエコブームという流れもあって、EVスクーターに興味を持つ人は多いだろう。
とくに家電量販店で展開されるブランドが登場し始めてからは、ブームも加速化しているといえる。
しかし市場に流通している製品の大半が原付一種、または原付二種での登録となる車両ばかりであった。
そこへ軽二輪クラスのモデル発表となれば、注目を集めるのも頷ける。
軽二輪クラス……いわゆる250ccクラスの登録なのだが、車格は文句なくビッグスクーターのそれだ。
今回の試乗は、今夏たまたま立ち寄った某出版社にあった現車へのイレギュラー的緊急試乗だったとご理解頂きたい。
そのため1/4程度のバッテリー残量しかなく、それを気にしながら(出版社の)周辺を2周しただけの感想程度となる。
立ち上がりからグイグイ加速する様は、これまでに経験した1000W程度以下の機種とは比べようもないほど力強いと感じた。
232kgという車重をまったく感じさせないどころか、エンジン搭載スクーターと同等以上といった印象だ。
とくに60〜70km/hくらいまでの到達速度でいえば、ひょっとするとVECTRIXの方が速いかも? というレベル。
重心位置の低さもあって安定性は高いのだが、コーナーで寝かすときに少々意識して寝かす必要があった。
しかし寝ないとか、面倒といったものではなく、あくまで許容できる範疇での感覚だ。
加えて回生ブレーキの効きが素晴らしい!
回生ブレーキとはスロットルを戻しきったより、さらに奥方向(通常の逆回転)へ回す操作をすることで充電とエンブレの様な制動効果が発生する機構のこと。
エンブレの様な制動効果といっても、通常の速度域であるなら回生ブレーキだけで十分な減速が可能なほど。
これはガソリンエンジン搭載スクーターにない装備として面白いとも感じたが、左レバーを当てながら(かけながら)回生ブレーキを使用したときに、何度かリヤがロックしてブレークするという体験をした。
決してナーバスに感じる程ではないが、慣れないとドキッとするかも知れない。
しかしそれだけ制動効果が高いため、上手に使いこなせればより強大なブレーキングが可能ともいえそうだ。
80km程度の航続距離と最高速度で100km/hを実現しているとあるが、残念ながらこれらについては未確認。
それでもVECTRIXの実力という点ではビッグスクーターに引けを取らないことを実感。
なによりモーターの音、タイヤの発する音、風を切る音……などなど、エンジン搭載車では聞こえてこないそれらの音が、どれも新鮮で楽しめた。
話題性もあり注目度も高く、優越感的な満足度はかなりのものがあると思われる。
108万円というプライスについては各々の判断に委ねるしかないだろう。
◎EVシーンの今後
さてインプレッションは以上だが、EVスクーターのポジションを考えたとき、VECTRIXをどう当て込むかという部分に課題がありそうだ。
現状では航続距離と充電時間の長さ(ほとんどの機種が満充電までに6〜8時間程度を要する)という現実から、エンジン搭載スクーターに取って代わるポジションには収まりづらい。
つまりガソリンを給油すれば、すぐさま再走行が可能……とはならない訳だ。
このことがネックとなって、良いと分かっているエコの普及が進んでいないともいえそう。
たとえば原付一種のエンジン搭載スクーターを利用している主婦の場合、買い物に行く足としてせいぜい2〜3kmの移動手段。
こんな使用状況なら余裕でこなせ、エコという観点からも、経済性という点でも満足のいくものといえるだろう。
これと同様、2〜3kmの移動距離で済む通勤使用で、かつ到着した場所(オフィスや店舗など)での充電が可能ならば、こういったケースでもEVスクーターの導入例としては成功と判断できるはずだ。
しかし通勤・通学のため駅までの移動手段といった使用ケースだと、駐車場での充電はほぼ不可能。
性能的には数日の往復を可能とするのは分かっていても、前夜に充電し忘れていたとしたら不安に思うはずである。
……おそらくこのような些細な不安要素でも歯止めとなってしまっているのではないだろうか。
だとすれば航続距離が80kmとカタログ上で謳われているVECTRIXはどうか?
スペックへの期待は走りに対するものだけでなく、郊外のベッドタウンから都心部の職場までの通勤をイメージしたくなるだろう。
ただ、到着場所での充電には絶望的なケースが圧倒的ということが容易に想像できる。
もしも欧州のようにコインパーキングなどの公共駐車場で充電設備が整っていれば、EVスクーターの利用に関する不安要素は激減するはずだ。
そのような状況が実現すればVECTRIXの通勤使用も安心できるだろうし、他のEVスクーターの普及も促進するに違いない。
インフラ整備……ぜひ行政の施策として強固に実現してもらえないかと思うばかりである。
VECTRIX
VX-1
乗車定員
2名
価格
108万円
カラー
トルネードレッド
フォレストグリーン
サファイヤブルー
メタリックシルバー
ブラック
ホワイト
全長×全幅×全高
NA
軸間距離
1,524mm
最低地上高
NA
シート高
775mm
車両重量
232kg
原動機種類
DCブラシレス・インホイールモーター
最高出力
21kW(28PS)
最大連続出力
3.8kW(5PS)
最大トルク
65Nm(6.6kgm)
最大連続トルク
22Nm(2.2kgm)
バッテリー種類
ニッケル水素電池
バッテリー電圧/容量
125V-3.7kWh
バッテリー充電電源
AC100V-200V(50/60Hz)対応
※充電器は本体に搭載
充電時間
2.5時間(80%充電)
※満充電に関しては発表なし
放電サイクル
約1,700回
バッテリー寿命
10年間/80,000km
フレーム形式
アルミ合金製バックボーン
タイヤサイズ
前:120/70-14
後:140/60-13
制動装置形式
前:油圧式ディスク
後:油圧式ディスク
懸架方式
前:テレスコピック式
後:ユニットスイング式
加速性能
0-50km/h:3.6秒
0-80km/h:6.8秒
航続距離
48km/h定地走行:88km
72km/h定地走行:72km
80km/h定地走行:56km
コラムテーマ:外国製スクーター その1
JISSFの意義について考えてみる
JISSFという団体が、我々スクーター好きにとってとても魅力的な活動を定期的に展開している(展開しようとしている)。
そのJISSFとはJapan Import Scooter Shop Federation
(ジャパン・インポート・スクーター・ショップ・フェデレーション)の略で、輸入スクーターを扱うショップが集まって出来た団体だ。
"J"で始まる団体名はけっこう見聞きするので、どことなく聞いたことがあるような気になってしまうネーミングも耳触りが良く絶妙だ。
ではJISSFとは、いったい何を目的とした団体なのだろう?
インポートスクーターを専門に扱うSHOP同志が、その垣根を越えて集い、ユーザー目線に立ったディーラー主導型のイベントを企画・実現していくことを目指した団体、それがJISSFなのだ。
◎Newスタイル輸入車試乗会
具体的には、これまでのメーカー主導型イベントでは実現不可能だった各メーカーの人気・注目機種を一堂に集結させてしまった試乗会が記憶に新しい。
今年の5月3日に実現させたまったく新しいスタイルの試乗会は「インポートスクーター試乗会 in 東京」とされ、各ブランドの魅力を体験&比較検討できる場として好評を博した。
各メディアからも一様に評価されており、当日のフレンドリーな雰囲気と、最も特徴的といえる教習コースを利用した試乗会の模様が紹介されていたのを目にした方も多いだろう。
日ごろユーザーと直に接しているショップという立場だからこそ生まれる空気感は、メーカーや輸入元とはスタンスが異なるからこその賜だ。
そして試乗会の会場に教習所を用いた点は、じつにセンセーショナルなものだったといえる。
◎教習コースでの試乗に驚かされた
通常、我々のイメージする試乗会といえばパイロンなどで設定されたコースを1周とか2周走って終わりだったり、先導車についていくだけのものだったりを想像してしまいがちだ。
それが時間の制限こそあるが、ほぼ自由に好きなだけ走ることを許していたところに驚きを隠せない。
自分のペースや走り方でお目当ての車両を思う存分試せ、確かめられるのだから、参加者にとって有意義なものであることは間違いない。
しかも教習所とは"擬似的な公道コンディション"を備えたコースなので、高速周回路、クランク、一時停止、交差点などなど、セクションの組み合わせ方によって"走る止まる曲がる"のシチュエーションを変化させながら体験できてしまうのだ。
つまり購入車両を絞り切れていないときの決断にも役立つだろうし、次期候補車として加えるべき車両かどうかの判断をする場としても有効だといえる。
メーカー試乗会では決して実現し得ない、こういった乗り比べ的試乗を可能としてくれるイベントは歓迎されて当然だろう。
◎4ショップが中心となり活動
当初、この団体を発起したのは4つのショップ(現JISSF理事ショップ)であったが、動き出してすぐに車両の輸入元が賛同。
そして聞きつけた別のショップがこれに加わり、用品のメーカーや輸入元なども出店の申し出をするなど、業界内で瞬く間にその活動は拡がりを見せ始めた。
大成功だった第1回目のイベントは評判となり、とくにショップから注目度が増しているそうだ。
現にJISSFへの加盟ショップはイベント終了後に増えている。
メーカーや輸入元では越えられない垣根のようなものを、いとも簡単に越えてしまったJISSF。
このJISSFにしか出来ないイベントスタイルは変わらずに継続していってもらいたいと思うのだが、成功は人を呼び寄せてしまうので、今後は更にスケールの大きなイベントへと成長していくはずだ。
そうなれば会場は手狭となってしまうだろうし、もしかしたら時間ではなく周回数に制限を設ける必要に迫られてしまうかも知れない。
それでもより良いイベントへと成長させ、しっかりと定着するよう願ってやまない。
◎ネットワーク構築の可能性
イベントの実現と成功はJISSFが掲げる目的ではあるが、その先にはインポートスクーターユーザーのための環境整備が視野にある。
環境整備と言ってしまうとかなり大げさではあるが、JISSFの加盟ショップで購入したユーザーであれば、どの加盟ショップでも変わらぬサービスを受けられるところまで持っていきたいという計画だ。
現状では、やはりそのショップのユーザーを優先する傾向が強くあり、他店のユーザーは後回しだったり断ってしまうケースもあると聞く。
これを改善していくためには、加盟ショップ間のネットワークを強めていく必要もあるだろう。
しかし実現すれば、国内メーカーのディーラーネットワークのように機能してくれるという期待も膨らむ。
ユーザーにとってもこのことは諸手をあげて大歓迎といえるはずだし、これこそがJISSFの意義といえそうだ。
◎さらに充実の内容に期待
ともあれJISSFとしては第1回目のイベントを見直し、より良い試乗会の実現に向け活動を続けている。
そんな第2回目の試乗会では、さまざまな催しを加えイベント色を強めたものになるという。
ご主人が試乗している最中に奥さんとお子さんが楽しめる内容も企画されており、家族みんなで楽しむことが出来る。
また彼といっしょに彼女もタンデムで試乗することが可能なので、彼女の意見も聞き入れて購入車両を決めることが出来る。
そして一般向けには国内で初のお披露目となるMP3ハイブリッドの試乗と、ベスパGTS250ieの公開オークションも開催……と盛りだくさんの内容が予定されている。
インポートスクーターに乗っている、これから乗ってみようと考えている、そしてインポートスクーターが好きというならJISSFの活動に注目してもらいたい。
そして出来ればJISSFの企画するイベントに参加して、彼らを守り立てていってもらえたらと思うのである。
JISSFの輪が広がり、いつか全国規模の加盟ショップネットワークを実現できれば、インポートスクーターフリークにとって決して悪い話ではないだろう。
そのような将来を期待したい1人として、ボクも個人的にJISSFを応援していきたいと思っている。
◎イベントスナップ
ここからは好評だった第1回目のイベントをふり返ってみよう
JISSF
インポートスクーター試乗会in東京
◎主催
JISSF/日本輸入スクーターショップ連盟
◎日程
2010年5月3日(祝/月)/10:00〜16:00
◎場所
池上自動車教習所
◎参加者数
約200人
◎天気
晴れ
出店スペースのほんの一部だが、このイベントが幅広い支援を受けていることが分かるだろう。工具やマフラーのメーカー、それに用品類、ベスパクラブによる旧車展示やグッズ販売、イベントにはお約束の飲食販売、挙げ句、四輪の展示販売まで行われていた
当日はお目当ての車両に乗ることはもちろんだが、免許や予算の関係で日ごろ乗ることの叶わない車両に乗ってみたかったという声も多かった。また同じモデルでも排気量の異なる車両を乗り比べ、検討目的の試乗に励む方も見受けられた
いざ走り出す前にはスタッフから操作に関する説明と、試乗コースについての説明を受ける。その後は思う存分、自由に走ることが許されてしまうという、なかなかに懐の深い試乗会であった
「あくまで便宜上の連盟会長です」とは石原さん(写真右)、そして「単なる雑用です」とおちゃらける武藤さん。このお二人が顔となってはいるが、理事を務 める4ショップ(SCS白山本店、コネクティングロッド、東京ヴェスパ、ベアせたがや)が協力し合ってJISSFを運営しており、現在では連盟への加盟 ショップも増えており(モトファクトリーエア、オートプラザKAME、丸富オート販売、スウマガゼンドゥモト、インディーズ)、今後ますますの活動を期待 していきたい
コラムテーマ:EV-その1
エコに敏感なのは素晴らしいこと、
だからよく考えてみようじゃないか。
電動スクーターについて、「出来ること、出来ないこと、してはいけないことがちゃんと理解されていれば、けっこう便利でエコな乗り物になると思うんだよね」というブログエントリーからの続きとなる本コラムをどうぞ。
◎4つにカテゴライズされる電動ビークル
現在、電動またはEVという切り口で考えると、大きく4つにカテゴライズできると思う。
まず電動アシストサイクル。これは免許もナンバーもいらないので、価格以外の障害はほとんどなく、実際にそこそこ普及しているし、今後もっともっと普及していくだろう。そうなると新規参入メーカーも現れるだろうし、価格的にも手に入れやすくなっていくと思われる。
次は電動アシストサイクルのように見える電動サイクル。アシストサイクルと異なり、電動パワーだけで走れるため、本当は免許とナンバー登録の必要がある。だけどペダルがあるので、買う人もよく分からずに電動アシストサイクルとの区別なく「便利な自転車」として買ってしまうのだろう。でも実際には違法な乗り物として社会問題になりつつあるから注意が必要。ちゃんと登録してナンバーの交付を受け、免許取得者が乗る分には大丈夫なのでご安心を。
そして今後登場が予定されていて、注目を集めそうなハイブリッドスクーター。4輪の世界ではすでに普及し始めているけれど、2輪ではこの夏から秋くらいに 市販開始されるので、さまざまな話題を呼びそうな予感だ。ひとまずはイタリア製と中国製のもので、合計3機種の発売が決定している。
最後は今回の主題でもある電動スクーター。じつは電動スクーターの先進国は中国で、ものすごい巨大マーケットとなっている。そこから日本へと持ち込まれ、 徐々に普及し始めている国内マーケットという図式だ。ただしこれは中国製品、もしくは中国製のパーツで組まれた製品ということで、これとは別の純国産製 品、それに今回のヤマハ・EC-03のような国内2輪メーカー製品とに分けて考えた方がいいだろう。
そう分ける理由だけれど、あくまで現状というくくりの中では中国製品など、アフターサービスの面に問題がありそうと思われるから。もちろんインポー ター(輸入業者)の努力によって、販路とともにサービスの体勢確保がなされているブランドもあるので、十把一絡げに"ダメ"とするのはどうかと思う。
しかし最初の問題がここにある。国内2輪メーカー製品の"モノとしての完成度"が非常に高く、単純比較をしてしまうと品質、性能、耐久性、安全性、環境性、販路、アフターサービスなど、あらゆる面で"弱い"や"足りていない"といったことになる場合が多い。
品質、性能、耐久性については価格が折り合っていると判断できれば大きな問題ではないだろう。
安全性については「どこまで?」という部分もあるので、オウンリスクという考え方で製品と向き合うしかないと思う。国内2輪メーカーの製品なら絶対に大丈 夫というものでもないのだから。ちなみに安全性とは製品自体の安全性だけでなく、使用に際して十分な制動性能があるかなど、総合的な話として捉えてもらっ たほうがいいだろう。
そして高額な買い物なのに現物を見ないで買うというリスクを理解した上でという前提になるが、販路もネットで構わないというなら大丈夫だろう。しかし全国 どこからでも買えるというネット環境だと、アフターサービスを受けようがないということを理解しておいた方がいい。身近なバイクショップや自転車店に持ち
込んだところで、パンク修理くらいなら受けてくれる可能性もあるだろうが、部品を必要とする整備になると間違いなく断られることになる。通常、販売契約を 結んでいないと部品供給が受けられないため、どうにもならないといった理由なので、修理を相談したお店に文句を言っても仕方ないのである。
純国産製品の場合だと、これらの用件はもう少しましだと想像できるが、やはり最上級は国内2輪メーカー製品なのだと納得できるだろう。国内2輪メーカーで は、全国にある既存の販売店ネットワークで販売もアフターサービスにも対応できるような取り組みを進めているのだから、ユーザーにとっての安心感は絶大 だ。
◎電動スクーターを理解しよう
さて、ちょっとここで電動スクーターの基本的なことをおさらいしておくことにする。
現状では搭載モーターの定格出力によってエンジン搭載車の区分に当てはめられているため、運転に必要な免許証の種類も行政に納める税金もエンジン搭載車と 同一になる。600Wまでが原付一種(いわゆる50ccの原付バイク)となり原付免許、1000Wまでが原付二種で普通自動二輪-小型限定以上の免許が必
要になる。それ以上の定格出力車もあるが、まだまだ種類が少なく価格もべらぼうに高いので、今回の話題からは敢えて外すことにする。
性能は、それぞれ製品毎に異なるが、だいたい最高速30km/hから60km/hほどで、航続距離が30kmから50kmくらいと発表されている製品が大 半を占める。ただし動力源は電気で搭載バッテリーから供給されるため、使い切ってしまうと再充電するまで走ることができないし、上り坂や全開走行を続ける
といった負荷の多い走行を続ければバッテリーの消耗が激しくなり、航続距離は格段に短くなるので注意したい。
再充電には凡そ8時間程度を要する製品が大半で、一晩コンセントにつないでおくことで満充電できる。バッテリーは車体から取り外せるタイプと、取り外せな いタイプがあり、取り外せるタイプなら自宅に持ち込んで充電可能だが、取り外せないタイプだとガレージや駐輪場に電源を確保する必要がある。
……と、まあ、こんなところが押さえておきたい予備知識だろう。
これらを踏まえた上で使うシーンなどを具体的にイメージし、よくよく考えてから購入を決めた方がハッピーな電動スクーターとの関係を築きやすいと思うの だ。エコな乗り物として注目を集める電動スクーターなのだから、結果として「なんだよエコじゃないじゃん」などと第三者から後ろ指を指されるような使用方 法ではちょっとなぁと思ってしまう。
だから敢えて言っておきたいのだ。
「出来ること」とは、地球環境に優しくエコであるということ。
「出来ないこと」とは、それほど遠くへは行けないということ。
「してはいけないこと」とは、用途が合わないなどの理由により使わなくなったといって処分してしまうこと。
エコというキーワードにピピッときて購入したというのに、航続距離に制限があるおかげで、まだ走れるのかを常に気にしてしまう。そして給油をしたら再走行 できる的に、急速充電でOKとはならないから「なんだよ、全然使えないじゃん。ガッカリだなぁ」となってお払い箱。……挙げ句、ゴミにしてしまっては資源 の無駄使いであって、エコとはまったく真逆の行為となってしまう。
だからそうならないためにも電動スクーターの基本的なことを理解して、正しく利用し続けていけるかを熟考し、その上で購入に踏み切ったのならとことん上手に乗り続けて欲しいと思うのだ。
◎エンジン搭載スクーターとの比較は現状でNG
航続距離の安全マージンまで加味すると家の周囲数キロ程度を移動するのに最適となり、そのように割り切ってしまえば主婦の買い物用だったり、近場に店舗を構える自営業者の通勤手段だったりという使い方が無難だ。
将来的には航続距離や急速充電の問題も改善されていくだろうが、現状ではエンジン搭載スクーターとの比較より、電動アシストサイクルとの比較が妥当かも知れない。
電動アシストサイクルは手軽だが、漕がなければ走れない。
電動スクーターには免許と登録が必要だが、漕がずに走ることができる。
電動アシストサイクルで、東京から伊豆までツーリングしてみようとは思わないだろう。
電動スクーターだからツーリングしてみようと思うなら、それはやめておいた方が無難だろう。
さて、ついつい長々と電動スクーターについて思うことばかりを連ねてしまった。それでも興味を抱き、購入を真剣に考えているという人にお勧めしておきたいのが、今回ヤマハ発動機から発表となったEC-03だ。
スペックは以下に記した通りだが、30km/定地という条件下では一充電当たり43kmの航続距離を確保しており、メーカーからの「都市部での近距離移動 に適した機能を発揮する」という発表を高く評価したい。この"近距離移動用"という部分をグレーにしておくと「片道20kmまでなら行けるんだ」とか、 「安全マージンを考えると15kmくらいかな?」など、どこまで走れるのかという方向に意識が向きやすい気がする。だからこの部分をきっちりオープンにし たところが素晴らしい。
◎デビューした新型はかなりお勧めだ
原付一種登録となるモデルだが従来型とは一線を画すスリムさを実現し、とても軽快なルックスだ。また超薄型パワーユニットYIPU(Yamaha Integrated Power Unit)と、高エネルギー密度50V新型リチウムイオンバッテリーを採用したことで約6時間の充電時間を達成したことと、常に滑らかな走行性能を実現し ているところも見逃せない。
さらに家庭用のアース付きAC100Vコンセントで充電可能なプラグイン充電方式を採用(ただしアース付きコンセント(3穴)での使用がマストで、タイプ の異なるコンセント用に変換プラグも用意されている)し、そのために家庭内まで持ち込まなければ充電環境の整わない集合住宅までも想定している点も注目
だ。これはコンパクトに設計された車体サイズの採用を意味しており、平均的なサイズのエレベーターならそのまま持ち込める(乗り入れられる)車体サイズと して、全長を1,565mmに設定したのだという。
将来的に現在より大きなバッテリーが搭載される可能性を視野に入れ、敢えてプラグイン方式を採用したことにヤマハの本気と誠意を感じた。これは高性能化と 航続距離の延長を実現するためにバッテリーが大きくなったとき、とても取り外し式だからと言って持ち運べるものではなくなるということまで想定しているか らにほかならない。
正直、我ながら"よいしょ"し過ぎではないかと思うところがなくもないが、ヤマハの取り組みはもっと評価されて然るべきだ。
◎完成度の高い2輪メーカー製EV
さて、今回の発表会ではわずかながらではあったが、当のEC-03に試乗する機会を得ることができたのでインプレッションもお届けしておこう。
自分の順番が来たとき、まず車体後部に手をかけて持ち上げてみたところ「実に軽い!」と声をあげそうになった。アルミフレームやアルミホイールを採用する など、かなり軽量化に努めた結果とのこと。同クラスのガソリンエンジン搭載スクーターと比較して、約3割軽い56kgを達成。外装パーツの少ないシンプル でスリムな車体構成の甲斐あって、とても軽快な印象だ。
驚く自分にニッコリしながら、その場の係が操作の基本的な説明を始めてくれた。走り出すための儀式的操作やモード切替について理解すると、そこからは自由 に試乗が可能……とは言っても、20mほどの直線を行って止まって折り返す。これを2往復というのが許された試乗の内容なので、どこまで掴みきれるか少々 不安があったのも事実。
兎も角、走りだしてみることに。真っ先にうねうねとスラローム状の走行を試してみた。速度域が低いとはいってもフレームがヨレたりすることは全くなく、かなり軽快なハンドリングという印象を持った。
次ぎにスタートダッシュを2度3度と繰り返す。低速トルクの太さが感じられ、ググッと前に出る感じはモーターらしいもの。しかし想像を超えるようなダッ シュではないところに、良く制御されていることが伺える。新設計のモーターおよびコントロールユニットは、発進時から低速走行時のトルク特性を従来モデル
比で10〜15%も向上しているのだが、後輪の回転数とアクセル開度から適切な出力をコンピューターが逐次計算&供給することで、常に滑らかな動 力性能を実現しているのだ。
最後は全開からのブレーキングだ。短い試乗コースなので速度は30km/hに届かなかったが、キュッという感じでピタッと静止することができた。軽さゆえ に効きは申し分なしと感じられた。その上、終始静かで操作も走りもスムーズだったことを付け加えておきたい。EC-03は、本当に良くできたゼロエミッ ション・エレクトリックコミューターだと断言する。
YAMAHA
EC-03
乗車定員:1名
価格:
25万2,000円
カラー:
ホワイト(写真上)
ブラウン(写真下)
全長×全幅×全高:
1,565×600×990mm
軸間距離:1,080mm
最低地上高:110mm
シート高:745mm
車両重量:56kg
(バッテリー装着状態)
一充電走行距離:43km
(30km/h定地)
最小回転半径:1.7m
原動機種類:交流同期電動機
定格出力:0.58kW(580W)
最高出力:1.4kW(1.9PS)/2,550r/min
最大トルク:9.6Nm(0.98kgf・m)/280r/min
バッテリー種類:リチウムイオンバッテリー
バッテリー電圧/容量:50V-14Ah(1h)
バッテリー充電電源:定電流・定電圧充電
充電時間:約6時間
駆動方式:平歯車(遊星減速機)
1次減速比:5.647(17/31/79)
フレーム形式:バックボーン
キャスター/トレール:25°00′/75mm
タイヤサイズ(前/後):60/100-12 36J(チューブ)
制動装置形式(前/後):機械式リーディング・トレーリング(ドラム)
懸架方式(前/後):テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドライトバルブ:12V、40W/40W×1(ハロゲンバルブ)
多機能デジタル液晶メーター(写真左)
速度、バッテリー残量、切替式オド&トリップを表示するほか、標準モードとパワーモードの切替や4桁暗証番号設定による盗難抑止装置を搭載
ワイヤー式ヘルメットホルダー(写真右)
ヘルメットはシート前端部のワイヤー式ヘルメットホルダーにかけておくことができ、なかなか使いやすい
リチウムイオンバッテリー
新開発バッテリーにはセルコントローラーが搭載され、電池電圧・温度などの電池状態を常に検出。これにより充電時・走行時の最適な車両制御を実現しているのだ
サイズ:352×204×76.4mm/重量:約6.8kg/定格電圧:50V/定格容量:14Ah/定格電力量:700Wh/セル構成:8並列14直列(18650サイズ円筒形リチウムイオン電池112本)
YIPU(ヤマハ・インテグレイテッド・パワーユニット)
超扁平面対向型ブラシレス交流同期モーター、超小型コントローラー、遊星歯車減速機、ドラムブレーキなどを後輪ハブ部に組み込み、リアアームと一体化した ことで実現した超コンパクト設計。モーターに異方性ボンド磁石を採用し、発進時、中速域及び登坂時の優れた性能を引き出すことに成功。とくに発進時から低 速走行時におけるトルク特性は、従来モデル比10〜15%もの向上を達成
◎ヤマハの新たな取り組み
さて、ヤマハ発動機は7月27日に神奈川県とともに取り組む「かながわEVバイク普及推進プロジェクト」の発表をしているのだが、これがまた興味深いものなのでご紹介しておこう。
神奈川県との取り組みなので神奈川県民に限定されてしまうのだが、電動バイクの体験機会を提供して有効活用法や新たなビジネスモデルを検証するというも の。電動バイク普及推進のための課題を整理することが目的で、同時に電動バイクの活用によるCO2削減効果も検証するということだ。
具体的には3つのな施策があげられており、電動バイクに乗る機会が増えると人々の生活や社会がどのように変化するかを検証しながら、CO2排出を抑えた低炭素社会を実現していこうというもの。
こういった活動をメーカーと行政が率先して行うことで、電動スクーターの普及・浸透に伴う問題点も洗われていくだろう。またユーザー、メーカー、行政、そ れぞれの立ち位置で低炭素社会という未来を目指すための意識改革も少なからず生まれる筈だ。ぜひ神奈川県でデータが取れたら終わりとはせずに、日本全国に この取り組みを拡大していってもらいたいと考える。
■パーク&チャージモニター事業
駐輪時間を利用して充電できる電動二輪車専用駐車場にて、通勤などにEC-03を利用する「パーク&チャージ」の実証をするためのモニターを募集して実施。EC-03の利用方法など、定量的に調査する(新横浜駅前駐輪場で実施、EC-03を6台使用)
■レンタルビジネス
周辺住民や観光客などを対象に有料でEC-03のレンタルを実施し、レンタルビジネスの可能性について検証する。また神奈川県などと連携し、箱根町で8月より先行レンタルを実施(横浜市内で実施、EC-03を3台使用)
■試乗会
電動二輪車の普及のため、県民を対象に無料でEC-03の試乗会を開催。今年度内に5回程度実施の予定。体験機会の提供により、幅広い層の県民を対象に電 動二輪車の性能や価格などに関する感想やニーズなどを集約する(神奈川県内5カ所で実施、EC-03を3台使用)