ベスパの描く未来予想図
類い希なる存在感を放つQuarantasei

1946年の登場以来、独自のスタイルと構造をずっと踏襲し続けることで、その愛らしさとともにパーソナルな移動手段として世界中で認知されてきたベスパ。
そして機能面においては、65年間を通じて継続的に休むことなく進化させてきたことが大いに評価されていることは紛れもない事実だ。
それが今回、Vespa 46(Quarantasei)の発表をもって「伝説のリニューアル」とまで表現するピアジオの真意を、現車から探ってみようと思う。

※2012.12.19現在で車両名がVespa 946に変更されているが、これに関するメーカー側のエクスキューズがないため、ここではVespa 46(Quarantasei)のまま掲載することとした

 

写真:ピアジオ本社広報

文:Buono編集部

 

 

◎スタイルのエッセンス

 

 
戦後から間もなく発表され、瞬く間に世界中でヒットを記録していったベスパ。
登場の時点から創造性豊かなデザインとメカニズムを備えていたことも特筆だろう。
そんなプロトタイプモデルであるMP6をも彷彿させるフォルムのVespa 46(Quarantasei)だが、ピアジオではそのMP6へのオマージュとして「独創的なイタリアンスタイルの美学から純粋なエッセンスだけを抽出し、ポンテデラスタイルセンターによる力作として伝統と革新の同居する未来を先取りしたかのようなデザインを実現」したとしている。
たしかに近未来的なイメージとして印象に残る……それでいて一目でベスパとわかる巧みなデザインといえるだろう。

 

◎テクノロジー面でのマイルストーン

 

ご推察の通り、そのモデル名がベスパのファーストイヤーを指し示しているVespa 46(Quarantasei)だが、そのテクノロジーは未来を見据えたものとなっているようだ。
とくに心臓部は排出ガスと音量を十分に抑えた非常に近代的なエンジンに仕上がっており、低燃費かつ近未来のパワーユニットとして完成度も高いと予測できるもの。
具体的には125ccキャパシティの空冷4ストローク3バルブ単気筒エンジンで、ie(フューエルインジェクション)化されたものと発表されている。
もちろんこの新しいエンジンは、世界で最も先進的なエンジンの開発および生産拠点の一つであるピアジオ最大のポンテデラ工場にて設計製造されており、環境に配慮しながらも優れたパフォーマンスを発揮。
加えて信頼性と安全性も十分に確保されているとのこと。
かつて世界中でベスパがライセンス生産されたり、コピーされてきたように、テクノロジーやエコといった観点においてマイルストーンとなるのかもしれない。

 

◎非常に近代的なエンジン

 

 
Vespa 46(Quarantasei)を特徴づけるとされる、エンジンまわりの革新的なメカニズムについても触れていこう。
燃焼特性に影響をおよぼすタンブル&スワールも計算のうえ、スパークプラグの最適なポジショニングや、3バルブを制御するタイミングの徹底的な見直しにより最高の燃焼性能を実現。
同時にヘッド内部を効果的に冷却する設計とされ、エンジン自体も熱流体力学のシミュレーションに基づく冷却システムが採用されている。
さらに省燃費・高回転型エンジンでの採用率が高いローラーロッカーが組み込まれ、クローズドループ制御方式のieシステムにはラムダプローブを用いたオートアイドルコントロールも採用。
テストを重ねて決定されたマッピングは、新世代のコントロールユニットとともに完成度の高さが想像できる。
またユーロ3以上の基準にも対応可能な三元触媒により、将来、より厳しくなるエミッション規制をしっかり見越しているところもさすがだ。

 

◎強心臓ぶりが光る

 

 
こうして環境にも十分配慮された近代的なパワーユニットは、125cc版で最高出力:8.7kW(11.83ps)/8,250rpm/最大トルク:10.3Nm(1.05kgf-m)/7,000rpmを発揮。
150版では最高出力:9.7kW(13.19ps)/8,000 rpm/12.6Nm(1.28kgf-m)/6,500rpmを絞り出すことに成功。
LX125ie(7.9Kw(10.74ps)/8,250rpm/9.6Nm(0.98kgf-m)/6,500rpm)との125cc比較では、0.8kW(1.09ps)/0.7Nm(0.07kgf-m)の向上。
同様にLX150ie(8,9Kw(12.10ps)/8,000rpm/11.8Nm(1.20kgf-m)/6,250rpm)との150cc比較も、0.8kW(1.09ps)/0.8Nm(0.08kgf-m)向上という数値をマーク。
ともに強心臓ぶりが際立っており、独創的でありながら一目でベスパと理解できる秀逸なデザインを採用するVespa 46(Quarantasei)は、伝説となる要素を十二分に秘めていると思っていいのではないだろうか。
少なくともBuonoではそう結論づけることとした。

 

 

 

model image @ Vespa 46(Quarantasei)